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異才なアーティスト『折坂悠太』のこと + 傑作『平成』全曲レビュー

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あらゆる音楽がはびこる現代において、少なくとも「売れてる=いい音楽」ではない時代になった。

もはや日本のヒットチャートは存在の意味を失っているし、今後もこうしたランキングばかり目にしていくのだろう。でも、それならそれでいい。売れているという事実はあるわけだし、それをハナから否定するつもりもない。

しかし、本当にいい音楽が埋もれていくのは寂しい限りなので、こんなちっぽけなブログでも、良いと思ったアーティストはどんどん紹介していきたいと思っている。

 

今回は、異才を放つ素晴らしきシンガーソングライター『折坂悠太』を紹介したい。

 

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折坂悠太とは

平成元年に産声をあげた、鳥取生まれの千葉県育ち。

その音楽性には「昭和」を想起させるフォーク・ミュージックが根底にあり、現代の音楽シーンにおいて、ひと際独特な世界観を持つシンガーソングライターだ。

父親の仕事の関係でロシアやイランにも住んでいた経験があり、いずれも帰国後には不登校になる。一時期は自宅に引きこもったこともあるようで、こうした経験が折坂悠太の音楽性に少なからず影響を及ぼしているのかも知れない。

そんな彼は10代の頃から音楽活動を始め、2014年には自主制作のミニアルバム『あけぼの』を発表。

2016年には松井文夜久一らとともに、『のろしレコード』というレーベルを立ち上げている。

折坂悠太の個性あふれる音楽は、宇多田ヒカルや後藤正文(アジカン)を始め多くのミュージシャンからも注目され、賛辞を浴びている。一聴すると古風な印象があるものの、聴く人の心を捉えて離さない楽曲と歌声が魅力的なアーティストだ。

これまでにリリースしている作品は以下の通り。

タイトルリリース日
1stあけぼの2014.11.22
2ndたむけ2016.9.7
3rdざわめき2018.1.17
4th平成2018.10.3

 

『あけぼの』『たむけ』『ざわめき』はフォークソング主体の作風で、曲によっては鍵盤の音色も心地良く、温かみのあるサウンドと歌声を存分に堪能できる作品になっている。

そして『平成』ではアレンジにおいて大きな飛躍を見せた。

これまでになく現代的なエッセンスや小粋なバンド・アンサンブルを織り交ぜ、より多くのリスナーに届くアルバムになっているのではないだろうか。

詩に関しても、彼の言葉選びには文学的で古風なところがあり、それらの言葉を発する歌声からは、若者らしからぬ風格さえも漂っている。

聴けば聴くほどに感動し、噛めば噛むほど味が出るような音楽だ。

フルアルバム、ミニアルバムを合わせてまだ4枚の作品しか聴くことができないが、その中から現時点での最新作『平成』の全曲レビューを書き記したい。

 

折坂悠太『平成』全曲レビュー

1. 坂道
オープニングを飾るのは小気味いいイントロから始まる『坂道』。軽やかなアコギのストローク、添えるように奏でるピアノの音色、ワウを効かせたささやかなリズム・ギターも曲に素敵な効果を加えている。

温かみのある歌声とボサノヴァテイストが心地いい楽曲だ。

2. 逢引
出だしのドラミングからして気持ちが湧き踊る、今作で一番のアップテンポなナンバー。曲間で聞ける朗読のような展開には微笑ましさがあり、ベースラインや昭和歌謡な趣の曲調からは、古き良き時代の匂いが漂っている。

3. 平成


今作を代表するタイトルナンバー。やはり折坂悠太の最大の魅力はこの歌声にある。最小限におさえたピアノのコード弾きを従え、曲はたんたんと進んでいく。力強く響きわたる歌声も感動的で、しみじみと聴き入る名曲だ。

4. 揺れる
ギターで弾き語る2分ちょっとの小曲。平成は日本の至る場所が揺れたわけだが、「そちらは揺れたろうか」と歌うこの言葉には、どんなメッセージが込められているのだろう。

5. 施毛からつま先
様々なジャンルの音風景が行き交う軽やかな曲。フォーク、ジャズ、カントリーの中にまんべんなく振りかけた和テイストな味付け。『逢引』同様、この曲のようなメロディやアレンジには、やはり昭和時代を感じてしまう。

6. みーちゃん
ジャズ・テイストを盛り込んだ歌謡曲。ダークな雰囲気のアンサンブルが渋い。コンガ・ドラムも取り入れているようで、後半のプログレッシブな感じがまたかっこいい。

7. 丑の刻ごうごう
ガット・ギターと歌と効果音。出尽くした感もあるポピュラー・ミュージックの真逆をいくオリジナリティを感じる。

8. 夜学


この曲を聴いたとき「TOKYO No.1 SOUL SET」というバンドを思い出した。語りかけるようなラップ調の歌がカッコ良く、アルバムの中では異質な空気を醸し出している。

民族音楽を想起するビートやそのノリをリードするアルト・サックスの音色がまた最高で、自然とカラダが踊り出す。

9. take 13
ピアノ、ビブラフォン、アルト・サックスで奏でる、物静かなインストゥルメンタル。

10. さびしさ


このアルバムの中で私的に一番好きな曲。特にサビからのメロディが秀逸で、美しいファルセットから低音へとつなぐ歌い回しが最高だ。「吹いてくれ」という叫びの圧倒的な力強さやアンサンブルの心地良さ。そのすべてが素晴らしい。

11. 光
アルバムのラストを飾るのは、温もりある美しいメロディが胸に響く弾き語り曲。ギターの音色に絡みつくストリングスの音がこの曲をより一層引き立てている。

やさしく、静かに、アルバムは幕を閉じる。

 

全曲レビューをしておきながらこういうのも何だが、言葉で曲の良さや雰囲気を的確に伝えるのはなかなか難しい。加えて好みもあることなので、まずは一聴していただくのが一番かとは思う。

先にも触れたように、素晴らしいミュージシャンや音楽はたくさん存在するのに、「知る機会がない」から埋もれてしまうのは、本当に残念なことだ。

今回ご紹介した折坂悠太の知名度もまだまだ低いと感じているので、一人でも多くの人に知ってもらいたいと勝手に願っている。

本当に素晴らしい歌い人なので。

 

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