アーティストがコラボして曲を発表するフィーチャリング(客演)。
〇〇〇〇feat.★★★とか、しょっちゅう見かけますよね。
そしてフィーチャリングと言うと、母体となるバンドやアーティストが他者を招き入れて曲を発表しているようなイメージがあります。
話題性も出るこうした活動を多くのアーティストが行なっていますが、ほとんどはシングルやアルバム中の1曲に参加するだけで終わっています。
そこで今回は、曲単位での一瞬のコラボではなく、アルバムリリースやツアーまでもやってしまった “ガチ勢” バンドの紹介です。
いくつか思い当たるこうしたコラボバンドの中でも、AJICOとABEX GO GOは、今だに聴き続けている最高なバンドでした。
ロック好きは要チェックですよ。
AJICO - 浅井健一 × UA –
数あるコラボの中でも、強烈なインパクトをもって生まれたAJICO。
メンバーは浅井健一(Gt.Vo)、UA(Vo)、TOKIE(B)、椎野恭一(Dr)の4人。
今思えば本当に奇跡だし、このバンドの化学反応は最高にカッコ良かった。
まずは、このバンドの核といえる浅井健一とUAについて触れてみたい。
浅井健一
1964年生まれのボーカリスト兼ギタリスト。
伝説のロックバンドBLANKEY JET CITYでキャリアをスタートさせ、解散後もソロ、SHERBETS、JUDE等のバンド活動で最高なロックを鳴らし続けている。
愛称はベンジー。
そして個人的な話で恐縮だが、一時期はベンジーの音楽しか聴かない(聴けない)日々が続いたほどハマった。
楽曲の良さはもちろん、ギターのワンフレーズを聴いただけでそれとわかるオリジナリティや、クールで個性的な歌声には魅力があふれ、この人の世界に足を踏み入れれば抜け出すことは難しい。
本気で思う。日本人として世界に通じる、数少ないミュージシャンだと。
ベンジーの才能はぶっ飛んでる。
UA
1972年生まれの女性歌手。
1995年にデビューし、ソウル・R&B系のシンガーとして人気を博した。
音楽ファンでなくとも一度はその歌声には触れたことがあるだろう。
エキゾチックなルックスと野性味あふれる歌声は、多くのリスナーを夢中にさせた。
そして、女優としても活躍するマルチな才能の持ち主でもある。
一見、すれ違うだけで終わりそうなこの二人。
しかし、才能あるもの同士が融合した結果、最高なロックアルバムを届けてくれた。
深緑
2001年2月7日リリース。ほとんど全ての作曲は浅井健一。作詞は二人とも担当している。
全曲プチレビュー
1.深緑
オープニングを飾るこの曲はイントロからしてベンジー節が炸裂。ダークな雰囲気を漂わせながらも、中盤から魅せるメロディアスな盛り上がりが最高。UAの歌声にも一気に惹き込まれてしまう。
2.すてきなあたしの夢
物静かな雰囲気の中、緊張感あるギターの旋律が耳を捉えて離さない。クールで淡々とした曲だが、UAの情熱的な歌声が胸の奥まで響いてくる。
3.美しいこと
メインボーカルがベンジーのロックナンバー。UAはハモリやコーラスで参加しているが、二人の声の相性はとても良く、特に終盤の掛け合いが超絶かっこいい。
4.Lake
深海を彷徨っているかのような感覚におちいる静かな曲。ベンジーが爪弾くアルペジオとUAのささやくような歌声が絶妙に絡み合う。
5.青い鳥はいつも不満気
ベンジーのベンジーたる所以は、この曲を聴けばよく分かる。どこから聴いてもベンジー節が炸裂している世界観。
6.GARAGE DRIVE
ノイジーなギターから始まるロックンロール。そして歌うはベンジー。静かな曲が多いアルバム中盤のアクセントとして、異質な輝きを放っている。
7.メロディ
今までの流れから一転して穏やかな曲調。まるで深い海の底や森の中から、光が差し込む場所へ辿り着いたかのように。アルペジオに寄り添うように歌うUA。優しさに包まれている。
8.メリーゴーランド
タイトルから想像できる楽しげな空気感はなく、心の奥深くでクルクルクルクルと回っているような、もの悲し気な世界。
9.フリーダム
アルバム中で最もキャッチーで明るい曲調と歌。AJICOよりも、ベンジーで言えばJUDEとかでやりそうな曲。
10.毛布もいらない
シンプルなコード・ストロークとUAの歌。シンプルがゆえに言葉もメロディも歌声も、すっと胸に沁み込んでくる。
11.波動
8分越えの大曲。静寂に包み込まれるようなテンションの中、後半に差しかかると一転してインスト・ジャムが始まる。こういう展開は好き嫌いがあるだろうけど、私的にはとても好み。プログレのような展開にセンスの良さを感じる。
12.カゲロウソング
ラストを飾るこの曲の肌ざわりは、不思議な感覚にとらわれる。熱を帯びているような、冷めているような。それでも、UAの温かい歌声があるから気持ちいい。
オリジナル・アルバム『深緑』の他に、ライヴ盤『AJICO SHOW』もリリースしているAJICO。
たった2枚とは言え、こんなにも素敵なアルバムを残してくれた。
何年経っても、ふとしたときに取り出したくなる名盤だ。
ABEX GO GO - 阿部義晴 × SPARKS GO GO –
「180日間限定」という短い活動期間だったにもかかわらず、今でも脳裏に焼き付いているバンドがABEX GO GO。
阿部義晴(ユニコーン)もSPARKS GO GOも、まだまだ精力的に活動しているが、さすがにABEX GO GOに関しては知らない人も多いかと思う。
しかし、忘れ去られるにはあまりにも惜しいユニットなので、ぜひ紹介させてほしい。
まずは、両者について少し触れてみよう。
阿部義晴
1987年にデビューしたロックバンド、ユニコーンのメンバー。担当は主にキーボードだが、メインでボーカルをとる曲も多数ある。
ユニコーンと言えば、正統派ロックナンバーとコミカルな楽曲が入り乱れている印象もあるが、空前のバンドブームの中、人気・実力ともに最前線にいたことは間違いない。そして数々の名曲を残しているバンドだ。
メンバー全員が曲作りを担当するのもユニコーンらしい特徴の一つで、中でも阿部義晴が書く曲には名曲が多いと思う。
私的にはユニコーンの中で一番好きな曲『開店休業』や、美しいメロディが秀逸な『月のワーグナー』も阿部義晴作。バンドの中心的存在である奥田民生にも全く引けを取らず、曲作りの才能にあふれる人だ。
ABEX GO GOでは阿部義晴を中心に曲が作られ、バンドがアレンジを加えていくことで、骨太なロックナンバーから胸に沁み入るミディアム調の曲まで、バランスよく仕上げている。
ロック色が強いSPARKS GO GOのメンバーと組むことによって、阿部義晴の音楽的な才能がより一層開花している。
SPARKS GO GO
1990年デビューの3ピース・ロックバンド。メンバーは八熊慎一(ボーカル・ベース)、橘あつや(ギター)、たちばな哲也(ドラムス)。
男臭くエネルギッシュで、痛快なロックを聴かせてくれる実力派。
キャッチーなメロディの曲も多く、3ピースならではの粗削りなバンド・アンサンブルを聴いていると、鳥肌ものの瞬間を味わうことがある。
活動歴も長く、完全にベテランの域に達しているが、いまだこのバンドが発する熱量は凄まじく、限界などない。
もしこのバンドを知らないなら、まずはベスト盤からでも聴いてみてほしい。
本当にカッコいいバンドだから。
ロックはシンプルなほどいい。
歌とギターとベースとドラム。ときどきピアノ。
表現の基礎体力が高いから、こんなにも素敵なアルバムが作れるんだね、きっと。
ABEX GO GO
1997年3月21日リリース。全12曲収録。
全曲プチレビュー
1.ABEX(作詞:阿部義晴 作曲:橘厚也)
ドラムソロから始まる挨拶代わりのロック・チューン。
2.Telephone Sex(作詞・作曲:阿部義晴/八熊慎一)
このタイトルからは想像できない哀愁漂うロック・バラード。名曲。
3.雨降り(作詞・作曲:阿部義晴)
八熊の男気を感じる骨太なブルース曲。ギターソロがこれまた渋い。
4.ドライブしよう(作詞:八熊慎一 作曲:阿部義晴)
バンド・サウンドは完全にロックだが、可愛らしさもあるポップなナンバー。
5.VISITOR(作詞:八熊慎一 作曲:阿部義晴)
八熊がメインで歌うヘヴィな曲。基本はゴリゴリのロックだが、中間部のメロウな展開では阿部義晴らしいアレンジを聴くことができる。
6.夕立ち(作詞:八熊慎一 作曲:阿部義晴)
これぞ阿部節。ストリングスやピアノも効果的に使われ、切なくも美しいメロディラインが胸に沁み入るミディアム・ナンバー。
7.おせわになりました(作詞・作曲:阿部義晴/八熊慎一)
ある意味、最も阿部義晴らしいポップなロックサウンド。
8.TOY JUMP(作詞・作曲・編曲:ABEX GO GO)
アルバム中、最もアップテンポでハードロックな印象の曲。ヘドバン必至。
9.Blamer(作詞・作曲:阿部義晴)
こういう曲を聴くと、阿部の歌声とバラードソングの相性はとてもいいんだなと思う。しみじみと聴き入るミディアム・ナンバー。
10.春は無罪(作詞:阿部義晴/八熊慎一 作曲:橘哲也)
曲をリードするカッティング、リフ、うねるベースライン。そして阿部が歌うメロディラインには哀愁さえ感じてしまう。素晴らしい楽曲。
11.BREAK THROUGH(作詞:八熊慎一 作曲:阿部義晴)
跳ねるリズム隊がイカしてる骨太ロック。歌メロもいいが、シンプルなサウンドでグイグイ攻めるバンド・アンサンブルが心地いい。これぞロック。
12.あいのうた(作詞・作曲:阿部義晴)
阿部の熱唱が胸の奥までも刺激するミディアム・ロック。なんなんだ、この曲は。マジで泣ける。ギターソロも最高。
全編曲:ABEX GO GO
このバンドを素晴らしいと思うのは、何度聴いても幸せな時間を過ごせるから。どの曲もメロディアスで、ロック好きなら反応必至なバンド・アンサンブルも堪能できる。
音楽を聴くうえで大切なのは、やっぱり認知度よりも幸福度なのかな。
聴き手の心に入り込んでくる音楽は、いつまで経っても色褪せない。
名盤。
あとがき
AJICOもABEX GO GOも再活動を期待できないのはとても残念ですが、たしかな爪痕と素晴らしいアルバムを残してくれました。
未聴の方で、もし興味をもったなら、ぜひこの音に触れてみてください。
あと、Cocco × くるりの『SINGER SONGER』なんかも良かったなぁ。こちらも大好きなアーティスト同士でしたが、もう少し「くるり色」がほしかったというのが素直な感想です。
アルバム制作やツアーまでやる「夢の競演」はこの先どれだけ見られるでしょうね。
そんな期待もしつつ、音楽ライフを楽しみます。
