90年代の音楽業界は凄かった。
一発屋から、今でも売れ続けているアーティストやバンドまで、出るわ出るわのJ-POP戦国時代。CDは売れまくり、街では老若男女がカラオケに行きまくり、今となっては信じがたい枚数を売り上げるミュージシャンが数多く存在していましたね。
フクローが言っていることはちょっと大袈裟ですが、まんざらオーバー過ぎる話でもなく、たとえばドラマやCMにタイアップされたり、少しでも話題になればすぐに大きな売り上げにつながり、ミュージシャンにとってはバブル時代だったのではないでしょうか。
流行れば、売れる。 売れなければ、消える。
これはいつの時代でもそうで当然のことかも知れませんが、少なくとも現代の音楽業界の惨状(売り上げ的な意味合いで)に比べれば、ミュージシャンにも夢があったと思います。
スマイルというバンドを知ってますか?
1995年にシングル『明日の行方』でメジャーデビューし、ポストミスチルとかスピッツとまで言われ注目されたバンド。しかし、次なるブレイクを期待されながらも、4枚のアルバムを残して2000年に解散。
正確には売れなかったわけではない。人気だってそれなりにあった。ただ、あの時代の「売れた」に対する感覚がちょっと狂っていただけ。
そして、僕は数あるバンドの中でもスマイルにとてもハマっていた。今でもふと聴きたくなるし、今だに多くの曲を一緒に口ずさめるほど。
少なくとも僕にとっては、90年代後期に売れていた多くの売れ線バンドよりも記憶に焼き付いているし、今でもずっと好きなバンドですね。
今回はずっと聴いているバンド、スマイルに注目してみたいと思います。
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スマイルとの出会いは名曲『明日の行方』
このバンドとの出会いはデビューシングル『明日の行方』。ラジオでたまたま耳にして、出だしのサビメロと歌詞に一気に惹き込まれました。
軽快なバンドサウンドに乗せて歌うキャッチーなメロディ、低音でくぐもった歌声。まずボーカルの歌声に魅力を感じたし、陽だまりの中にいるような暖かみのあるサウンドがとても心地良く、一回聴いただけで忘れられなかった。
「明日の行方」のメロディが頭から離れず、他の曲も聴いてみたいという衝動に駆られ、さっそくアルバムを購入。それが1995年発表のデビューアルバム『SMILE-GO-ROUND』です。
シングル「明日の行方」「昨日の少年」収録。ジャケットもこの時代のバンドらしく、オアシスの1stをモチーフにしたかのようなデザインが微笑ましいですね。
そして肝心の音ですが、新人バンドのデビュー作とは思えないほどに完成度が高く、ポップでカラフルな楽曲からは名盤の匂いが漂ってます。
正統派で硬派、ミディアム調のポップなナンバーが多いですが、バンドの根底にあるのは男臭いロックです。ボーカル兼ソングライター、このバンドの核である浅田信一氏の才能はこの時点で沸点を迎えていて、メロディーメイカーとして本当に素晴らしいと思います。
1st以降もコンスタントにアルバムをリリース!
スマイルは1stリリース後も、1~2年という期間でコンスタントにアルバムをリリースしていきます。レコード会社のチカラの入れようがよく分かりますね。
UNKNOWN WORLD
1996年9月発表の2nd。シングル『ジグソーパズル』『夢見たものは』収録。
私的ベストは『月曜日の雨』。ミディアムテンポの温もりある楽曲で、浅田信一のセクシーな歌声には男だって惚れぼれしますよ。1st同様にキャッチーなメロディの楽曲が並びますが、ロック色が強くなった印象。より多くの音楽ファンに届きそうな会心の作品。
RUB OF THE GREEN
1998年2月発表の3rd。シングル『風と雨の強い日』『DRIVE』収録。
前2作までにあったようなポップ感は薄れ、よりロックファンへ向けたアプローチになっています。『WESTSIDE』のようなインスト曲を収録したのも今までのイメージを払拭したい思いがあったのかも知れない。
しかし、このアプローチが裏目に出たか。スマイルらしいキラーチューンには出会えず、私的には中途半端な立ち位置のアルバムになっている。
FOR YOUR SMILE
1999年4月発表の4th。シングル『クラゲ』『大切な人』『IN EVERY PLACE』収録。
ラストアルバムにして最高傑作。私的な思いで恐縮ですが、3rdで感じていた不満を見事に解消してくれた、まごうことなき名盤。特に『孤独な旅路』の渋みの効いたカッコ良さといったらない。アンサンブル含め中毒性ありますね、これは。
なぜ、これで終わってしまったのか。とてもいいバンドなのに残念でならなかった。
日本語ロックの名盤として、多くの人の耳に届いて欲しい作品です。
スマイルの魅力 まとめ
最後に、改めてスマイルの魅力を挙げてみたいと思います。
・ソングライターである浅田信一氏のセンスに脱帽。天才的なメロディラインや歌詞の言葉選びの上手さも素晴らしい。
・浅田信一氏の声。低音で太く伸びる歌声はセクシーでさえある。ちらほら聴かせるファルセットも美しく、とても心地がいい。
・バンドアンサンブル。最小限の音数で最大限に曲の良さを引き出している。また、キーボードがメンバーにいるので、アレンジに広がりがあるのも5人組の強み。
・ポップで聴きやすい楽曲も多いが、ロック色やサイケ色が強い曲もあるところが、ロック好きのツボをついてくる。
・ロックバンドたる骨太なギターサウンド。シンプルだが耳に残るフレーズの数々。
ざっとこんな感じになりますが、あとはもう “フィーリング” でしょうね。
スマイルの音楽を聴いているだけで幸せな気持ちになりますから、僕は。
ちなみにベスト盤もリリースしているので、手っ取り早くスマイルの音楽を楽しむにはいいかも知れないですね。
スマイルを知らなかった人が、聴いてみるトリガーになれたら幸いです。
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