歌ってもカッコいいギタリスト!
取り上げるのは、あくまでも「ギタリスト」としてデビューした人たち。
ボーカルを披露したのはソロ作や別プロジェクトであって、後になってからの人たちということになります。なので、デビュー時から歌を歌うギタリスト、例えばジミ・ヘンドリックスやスティーヴィー・レイ・ボーンなどは除外しています。
今となっては歌うことが当たり前になっているギタリストばかりですが、今回は「歌ってもカッコいい、歌が上手いギタリスト」に注目してピックアップしてみました。
ヌーノ・ベッテンコート 『Population 1』
エクストリームのギタリスト、ヌーノ・ベッテンコートがPopulation 1名義で2002年にリリースした作品。ヌーノと言えばソロ・アルバムの1st『スキゾフォニック』のインパクトも強烈だったが、モーニング・ウィドウズを経てリリースした今作は明らかにヌーノの中で異質な作風だが、とても上質な音楽を味わうことができる。
エクストリームで魅せたファンキーなリフや、凄まじいテクニックの超絶ギターソロなどは影を潜め(とは言え、曲によっては凄いプレイを披露しているが…)、歌もののロック・アルバムとしてより多くの音楽ファンにアプローチをかけている感がある。
ミディアムナンバーが中心で、歌うことが自然になってきたヌーノの歌唱もまた素晴らしい。ハイセンスなソングライティングはさすがのひと言で、ヌーノ作品の中ではひと際メロディアスな楽曲が多い。
特に『Ordinary Day』や『QPD』『Dedication Breakup』などを聴いていると、ボーカリストとしての才能にも惚れ惚れしてしまうほどだ。
歌うヌーノを聴くならコレ!ギタープレイも含め、楽曲の良さが際立つ隠れた名盤。
リッチー・コッツェン 『GET UP』
1stリリース時で若干まだ19歳。全曲インストで臨んだこのアルバムで披露する驚異的なギタープレイの数々と曲作りの才能にはただただ驚くばかりだが、続く2ndでは早くもボーカルをとっている。しかも、そのハスキーでソウルフルな声や歌の上手さは、リードボーカルでも充分に通用するレベルだ。歌うギタリストの中ではトップクラスだと思う。
ポイズンやMr.Bigなど、あくまでギタリストとして活動していた時期もあるリッチー。しかし、本人は歌いたいんだろうな。本当に歌が上手い。
ソロアルバムだけ見てもかなり多作な人だが、ここでは2004年リリースの13th『GET UP』をおすすしたい。『remember』『made for tonight』『special』のようなバラードも最高(ギターソロも素晴らしい)。
もちろんバラード以外でもリッチーらしい豪快なギタープレイとグルーヴィーな楽曲は聴きごたえ充分。幅広い音楽ファンを魅了するであろうガチの名盤。
ザック・ワイルド 『Pride & Glory』
数々の名盤を支えてきたスーパープレイヤーがオジー脱退後にソロ・プロジェクトとして立ち上げたのがこのバンドであり(後のブラック・レーベル・ソサイアティ)、唯一リリースしたアルバムが今作だ。
ザックのルーツでもあるサザンロックを少しハードに仕上げたような作風だが、驚くのは素晴らしきソングライティングとボーカリストとしての実力で、野太く渋めな歌声は意外にも聴いていてとても心地がいい。
特にミディアム調の曲に顕著で、感情を揺さぶる泣きメロギターと歌声には、本当に胸が熱くなる。『Lovin’ Woman』『Sweet Jesus』『Machine Gun Man』『Cry Me A River』『Found A Friend』あたりは必聴の名曲。
男臭いゴリゴリなサザンテイストとメロウな楽曲が入り乱れる至高のロックアルバム。
ジョン・フルシアンテ 『THE WILL TO DEATH』
レッチリを2度目に脱退したときに、ジョンは「自分の音楽を探求したい」との理由を挙げているが、何気に多作なソロ作品をを聴いているとジョンの言っていることがよく分かる。
たしかにレッチリというバンドでは到底やることができない音楽で、正直、一度聴いただけで聴かなくなるアルバムもあった。それくらい実験的で陰鬱に感じるものが多い。悪くはないが入りこめない。そんな感じか…。
それでもアルバムによってはかなり聴き込んできたし、ジョンの歌声にはかなり癒されてきている。決して歌が上手いタイプではないと思うが、胸の奥にすっと入りこむ不思議な魅力があり、エモく、そしてあたたかい。
ジョンの素敵な歌を聴くなら今作がおすすめで『Loss』『The Mirror』『Wishing』をはじめ繊細で感動的な楽曲が多く収録され、なかでも『Far Away』は何度聴いても涙を誘う名曲だ。
悲しく、儚く、美しく、優しい。一人の男、一人の音楽家が造り上げた感動的なロック・アルバム。
グレアム・コクソン 『The Spinning Top』
歌だって普通に上手い。これだけ歌えて自由に曲が書けるなら、バンドを離れたことは必然だったか。ソロ作も多い人だが、もしグレアムらしいポップでパンキッシュなギタープレイに触れたいなら、5th『Happiness in Magazines』や6th『Love Travels at Illegal Speeds』かも知れない。
しかし「歌」を中心に聴くなら、7th『The Spinning Top』が素晴らしい。
多くの楽曲がアコースティックサウンドのコンセプトアルバムで、ベックで言うなら『Sea Change』のように穏やかであたたかく、聴いていて心地がいい。知らずに聴いたらグレアム・コクソンの作品とは思えないかも。
歌心あるギタリストが見つけた新境地。いい曲だらけの目立たない名盤はこれ。
ジェームス・イハ 『Let It Come Down』
全編をキラキラしたサウンドで埋めつくし、さわやかな歌声と癒しのメロディからは前述したようなロックバンドの影を見つけることができない。
どちらが本当のジェームス・イハなのか知る由もないが、ソロ作でこういう音楽性を示すということは、きっとそういうことなんだろう。
どの曲が突出していいというアルバムではないが、逆に言えば捨て曲が見当たらず、純度100%のとても聴きやすいギターポップということになる。
愛が溢れるメロディに癒される、全音楽ファン必聴の理想的なギターポップ・アルバム。
リッチー・サンボラ 『Stranger in This Town』
まず、ツボを心得たギタープレイはさすがのひと言で、そこかしこで弾きまくるメロディアスなギターソロは、リッチー・サンボラのお家芸なのかも知れない。そして、何より特筆すべきはその歌声。声質の良さに加え、歌も相当うまい。
渋めでブルージーかつソウルフルな楽曲が大半を占めるが、ボン・ジョヴィでもやりそうな曲もありソングライティングのセンスが光っている一枚。
ボン・ジョヴィというバックボーンなどなくともリッチー・サンボラは凄かった。名作。
バーナード・バトラー 『PEOPLE MOVE ON』
私的にはスウェードよりも聴きやすく、ボーカルに関して言えばちょっとクセのあるブレット・アンダーソンよりも断然に好き。何より純粋にいい曲ばかりなので、“元スウェード“なる肩書など必要ないほどに素晴らしい作品だ。
多くの人が名曲に挙げる『Not Alone』、陽だまりのようにあたたかいタイトル曲『People Move On』、ゴスペル調なコーラスと泣き叫ぶギターソロが胸熱な『Stay』。
ん~。違う。こんな風に数曲をピンポイントで紹介するようなアルバムではないかも知れない。だって、全曲いいんだもの。理屈抜きにカッコイイ。
バーナード・バトラーの音楽的才能は凄い。想像を超えた音楽がここにある。
まとめ
●ヌーノ・ベッテンコート 『Population 1』
●リッチー・コッツェン 『GET UP』
●ザック・ワイルド 『Pride & Glory』
●ジョン・フルシアンテ 『THE WILL TO DEATH』
●グレアム・コクソン 『The Spinning Top』
●ジェームス・イハ 『Let It Come Down』
●リッチー・サンボラ 『Stranger in This Town』
●バーナード・バトラー 『PEOPLE MOVE ON』
以上、歌ってもカッコいい海外のギタリストから選んだ、おすすめソロアルバムでした。
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