音楽史の中でロックの名盤と呼ばれるものは何枚もあるわけですが、ロック好きであれば気になったアーティストやバンドの作品はとりあえず聴いてみますよね?
かくいう僕も、年代や細かいジャンルなど考えることもなく幅広く音楽を聴いてますが、
というように、1回や2回聴いた程度では名盤と呼ばれる理由がよくわからず、いまいちピンとこない作品があります(ました)。タイトルにもあるようにもちろんこれは過去形の出来事であり、今となってはどのアルバムも大好きで、まごうことなき名盤だと思っています。
そうなんです。これはただ単に、最初に聴いたタイミングが悪かっただけのこと。
というわけで、今回は「良さがわかるまでに時間がかかった」ロックな名盤の中から10枚のアルバムを挙げてみます!
ニルヴァーナ 『ネヴァーマインド』』
1991年リリースの2ndアルバム。世界的なグランジ・ムーブメントのきっかけになった超有名作。バンドや音楽のみならず、このジャケットはあまりにも有名ではなかろうか。
リリース時の話題性も手伝い、さっそくこの作品を手にした当時、僕は1回聴いてこのアルバムを嫌った記憶がある。しかも1曲1曲を最後まで聴くことさえ出来ず、飛ばし飛ばしの流し聴き。何がいいのかさっぱり分からなかった。
そのまま放置してしばらくが経ち、しまいには友人が持っていたマニック・ストリート・プリーチャーズの1stアルバムと交換してしまったほど。
結局そこから数年後に再び買い戻し、「ネヴァーマインド」に留まらず全アルバムを聴きまくるのだが…。
ジャケットの赤ちゃんにもロックを感じる、グランジ史上屈指の名盤。
セックス・ピストルズ 『勝手にしやがれ!!』』
1977年リリースでパンク・ロックの代名詞的なアルバム。ニルヴァーナに続き「ネヴァー・マインド」の文字が並ぶが、時系列で言えばもちろんピストルズの方が先である。リリース当時の僕はまだ幼児。完全な後追いで聴くことになるわけだが、初めて聴いたときの感想は「クソ」。言葉は悪いが聴くに堪えなかった。
初めて聴いたときはHR/HMやメロディアスな音楽にハマっていた時期なので、単純にパンクと言うかこのバンドの音楽が合わなかったんだと思う。一本調子な演奏もヘタウマなボーカルも、どの曲を聴いても同じように聴こえた。
しかし、いざ好きになると嫌悪感を抱いていたことの一つ一つがカッコ良く聴こえるから不思議なものだ。すべてが挑発的で、シンプルなサウンドが最高にカッコいい。
音楽って技術を超えた何かを感じたときに胸に響いてくる。そうした意味でも若者らしさや“衝動的な何か”を封じ込めた今作のようなアルバムは稀かも知れない。
パンクでも何でもいい。ロックに目覚めたら聴いておきたい、世界が認めた名盤。
レディオヘッド 『OKコンピューター』』
1997年リリースの3rdアルバム。バンド史上最大のヒット作かつ90年代を代表する名盤。
1st『パブロ・ハニー』や2nd『ザ・ベンズ』のようなギター・ロックを求めていた僕には、全体に漂う薄暗さや難解な趣に違和感を覚えた。「聴きたかったレディオヘッドではないな、これは」というのが一聴した正直な感想で、ほとんど聴くことはなかった。
そして次作『キッドA』でエレクトロニカ・サウンドへ移行し、なぜかここからのレディオヘッドにかつてないほど夢中になり、6th『ヘイル・トゥ・ザ・シーフ』の頃にはもはや自分の中で神とも言えるバンドになっていた。
新作が出るたびに聴きまくり、並行して過去作も聴いている中で改めて『OKコンピューター』を聴いてみると…。
かつて感じた薄暗さは美しさへと変わり、今ではレディオヘッド全作品の中でもかなり好きなアルバムになっている。
「あの頃の俺はどうかしてたんだ」と思わずにはいられない、至高の神アルバム。
ザ・ドアーズ 『ザ・ドアーズ(ハートに火をつけて)』』
1967年リリースの1stアルバム。60年代後半から70年代初頭と言えば、ロック史の中でも最重要な期間だと思っているが、ツェッペリンやパープルのようなサウンドが好物な僕からすればドアーズの音楽は暗すぎたし、ジム・モリソンの歌声にも苦手意識があった。
今作を初めて耳にしたのは20代前半の頃だったと思う。サイケデリックなバンド・サウンドには渋みがありカッコイイと思った曲もあったが、なんか退屈だったんだよなぁ。
結局、その後は特に聴くこともなくドアーズの存在を意識することもなかったが、40代を迎えて改めて聴いたときに、過去に受けた印象とは全く違うサウンドに感じた。
そして「ジム・モリソンってこんな感じだったっけ?? すげーカッコいいじゃん…」といった始末だ。
再び聴いて本当に良かったと思う。
若かりし時代に理解できなかったことを悔やんだ、サイケで美しき名盤。
AC/DC 『バック・イン・ブラック』』
1980年リリースの6thアルバム。世界中で売れまくり、今作の総売り上げは5,000万枚を超えるというから驚きだ。ロックの名盤紹介などでは必ずと言っていいほど名が挙げられている。
もともと僕がAC/DCにハマったきっかけはライブ盤の『ライブ』という作品であり、特にオープニングを飾る「サンダー・ストラック」のイントロなんてカッコ良すぎ!ついつい拳を突き上げてしまう。このアルバムは会場のボルテージが上がる様子までが見事にパッケージされており、最初から胸が熱くなるようなロックンロールを聴かせてくれる。そしてその興奮はアルバムが終わるまでずっと続くことになる。
さあ、ではオリジナル・アルバムではどうだろう。ライブ盤だけで満足していた僕はAC/DCのスタジオ盤までは聴いていなかった。そして、最初に聴くならやはり有名な『バック・イン・ブラック』かと思い手にしてみると…。
う~ん、かっこいいんだけど、普通かな…。アルバムに1~2曲はキラー・チューンと呼べるような曲がほしいなぁ。どの曲も似たような感じで飽きちゃうよ、これは。
最初の印象はこんな感じ。AC/DCならむしろ他のアルバムの方が好みだ。
と思ってはいたものの、仮にここ10年で聴いたAC/DCの作品を思い返してみれば、何気に一番聴いているのがこのアルバムだということに気が付いた。
ということは、
「これってもしかして名盤じゃね??」と気が付かずにずっと聴いていた、味わい深く痛快なハードロックの大名盤。
ウィーザー 『ウィーザー(ブルー・アルバム)』』
1994年リリースの1stアルバム。「泣き虫ロック」などとも評されるパワーポップ・バンドが放った素晴らしきデビュー作がこちら。
僕がウィーザーを初めて聴いたのは少し遅かった。3rdの『グリーン・アルバム』からで、優しく胸キュンな歌声や泣きメロ、泣きのギター、シンプルなサウンドながらも胸に残るグッドソングが散りばめられたこのアルバムを僕はすぐに好きになった。
続いて2nd『ピンカートン』を聴いてみて、完全にウィーザー・ファンになった。そして、名盤と呼ばれるデビュー作をついに聴く。リリースとは逆の順番で聴いたかっこうだ。
しかし期待値が高かったせいか、聴いた3作の中で一番しっくりこなかった。最大の理由は自分の中でのキラー・ソングに出会えなかったこと。2ndや3rdにはあった涙腺を刺激するような曲を見つけられなかった。演奏はカッコいいんだけど、歌メロにパンチがないなぁ。
結局、1stはたまに聴く程度だったが、聴いているうちにラストを飾る「オンリー・イン・ドリームス」後半のエモいギターソロに激しくハマり、そこからアルバム全体をよく聴くようになったら…。最高だね、これは。
キュンキュンと胸が高鳴るエバーグリーンなブルー・アルバム。絶対的名盤の一枚だ。
ザ・クラッシュ 『ロンドン・コーリング』』
1979年リリースの3rdアルバム。バンドの代名詞的なアルバムであり、あまりにも有名なこのジャケット写真は、ロックファンでなくとも一度は目にしたことがあるだろう。
前述したセックス・ピストルズ同様に、僕はパンク・ロックをあまり通ってきていない。それでも、せめて有名な作品くらいは押さえておこうと当然このアルバムも聴いてみた。クラッシュで最初に聴いたのはこの作品だ。
1曲目はアルバムタイトルにもなっている『ロンドン・コーリング』だが、イメージしていたパンク・ロックには程遠く、肌に合わない。続く2曲目はもっと合わない。こうなっちゃうと気持ちが入らず、聴く耳も曲に集中できなくなってくる。
通して聴いた印象は「なんだか、思ってた音楽と全然違うなぁ、これ。」くらいなものだった。しかし妙に耳馴染みのいい曲もあった。
最初こそ理解できなかったが、結局、何度となく聴いているこの作品。ロック、パンク、レゲエ、スカなど幅広い音楽スタイルを盛り込み、ポップな曲から胸に沁み入る楽曲までがズラリと並んでいる。
パンクとして聴く必要はない。これは全ロック・アルバムの中で輝き続ける金字塔。
ジェフ・ベック 『ブロウ・バイ・ブロウ』』
1975年リリース、ジェフ・ベック名義の1stアルバム。ギターインスト・アルバムの金字塔で、名盤紹介では必ず名が挙がるジェフ・ベックの代表作。
僕は当ブログでギター好きだということを何度も言っていて、ギターインストをこよなく愛しているし数多くのアルバムを聴いてきている。
当然、名盤と呼ばれる今作も聴いていたわけだが、まったく良さが理解できなかった。
なぜか…。はっきり言ってわからない。
ただ、それはたぶんHR/HM系のギタリストが弾くようなプレイに耳が馴染み過ぎていたんだと思う。もともとそっち系が大好きなので。今作を聴いた当時の僕には、ちょっとアダルト過ぎたのかも知れない。
そして、ジェフ・ベックが弾くギタープレイやセンスの素晴らしさに、僕の感性が単純に追い付いていなかっただけだろう。
ギターをこよなく愛する男として今ならはっきり言える。これぞギターインストの最高峰!
ボブ・ディラン 『フリー・ホイーリン』』
1963年リリースの2ndアルバム。出生作『風に吹かれて』収録。
僕はディランの熱心なファンではないし、何十枚も出ているアルバムも、ほんの一部しか聴いたことがない。もともと僕の音楽の聴き方はメロディ重視で、歌詞の内容は二の次だからか、今作のようにフォークの弾き語りばかりだと飽きてしまう。
ベスト盤を含めた2~3枚の作品を聴いてディランの音楽にお腹いっぱいだった僕は、30周年記念のトリビュート・ライブ・アルバム(BOB DYLAN The 30th Anniversary Concert Celebration)を聴いてディランの曲の見え方が変わった。
錚々たるメンツの大物ミュージシャンが集ったこのコンサート。なかでも特に素晴らしいパフォーマンスだと感じたのが、スティーヴィー・ワンダーの『風に吹かれて』。ソウルフルに歌い上げる絶品な歌唱は涙なしでは聴けないほどに完成度が高い(アレンジしすぎて原曲の影は薄いが…)。いや~、それにしても素晴らしいロック・コンサートってあるもんだ。
この作品を聴いた後にオリジナルのディランを聴いたら…、あらためて楽曲の良さに気が付いたわけで…。
スティーヴィー・ワンダーの素晴らしいカバーを経由して、本家にハマったフォーク・ロックの名盤。
マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン 『ラブレス』』
1991年リリースの2ndアルバム。バンドの代表作であると同時にシューゲイザーの代名詞とも言える作品。ノイジーなギターサウンドに脱力系な男女のボーカルが乗り、独創的な世界を構築している。
このアルバムが話題になっていた当時、僕の音楽趣味の範囲はどんどん拡大していた頃で、気になったバンド、アーティストは片っ端から聴いていた。もちろん今作も。
しかし一聴したときの感想はひどいもので、ノイジーなギターサウンドはただの雑音にしか聞こえず、とにかく録音バランスの悪さに耳が萎えた。ボーカルが後ろに引っ込み過ぎで、ノイズまみれのサウンドも気分が悪い。シューゲイザーってこんな感じなのか…。もう聴くのはやめよう。これは合わない。
そして長いこと聴かなかったが、雑誌やたとえばディスクガイドの本など、あらゆるところでマイブラの記事を目にしていると、なんだかとても気になって。
もう一度聴いてみたら…、何気に美しいメロディと中毒性があるサウンドにどっぷりハマってしまった。壮大で美しい音の渦が凄まじい。なるほどね、これはカッコいいかも。
誰もが聴ける音ではないが、ノイズにまみれた美しくも儚い名盤。
まとめ
●ニルヴァーナ 『ネヴァーマインド』
●セックス・ピストルズ 『勝手にしやがれ!!』
●レディオヘッド 『OKコンピューター』
●ザ・ドアーズ 『ザ・ドアーズ(ハートに火をつけて)』
●AC/DC 『バック・イン・ブラック』
●ウィーザー 『ウィーザー(ブルー・アルバム)』
●ザ・クラッシュ 『ロンドン・コーリング』
●ジェフ・ベック 『ブロウ・バイ・ブロウ』
●ボブ・ディラン 『フリー・ホイーリン』
●マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン 『ラブレス』
以上、洋楽ロックの名盤の中で、私的に良さが分かるまでに時間がかかった10枚のアルバムを紹介しました。