ロック史の中で、70年代は特別な時代。
いつの時代でも音楽シーンを盛り上げるバンド、アーティストはたくさん存在しますが、ロックの黎明期だった70年代の重要性は格別です。
今回は70年代ジャパニーズ・ロック史の中で、絶対に押さえておきたいバンドのアルバムをピックアップしました。
ぜひご覧ください!
- RCサクセション 『シングル・マン』
- PYG 『PYG!』
- サディスティック・ミカ・バンド 『黒船』
- BOWWOW 『GUARANTEE』
- テツ・ヤマウチ 『ききょう』
- 四人囃子 『ゴールデン・ピクニックス』
- ティン・パン・アレー 『キャラメル・ママ』
- フライド・エッグ 『ドクター・シーゲルのフライド・エッグ・マシーン』
- 憂歌団 『憂歌団』
- 鈴木茂 『BAND WAGON』
- フラワー・トラベリン・バンド 『SATORI』
- シュガー・ベイブ 『SONGS』
- コンディション・グリーン 『Life of change』
- カルメン・マキ&OZ 『カルメン・マキ&OZ』
- 井上陽水 『氷の世界』
- クリエイション 『ピュア・エレクトリック・ソウル』
- センチメンタル・シティ・ロマンス 『センチメンタル・シティ・ロマンス』
- Char 『Char』
- 金子マリ&バックスバニー 『MARI & Bux Bunny』
- はっぴいえんど 『はっぴいえんど』
- まとめ
RCサクセション 『シングル・マン』
RCサクセション初期の代表作で3枚目となるスタジオアルバム。バンドとして初めてエレキサウンドを本格的に取り入れた作品。表現の幅が広がり魅力に尽きない楽曲ばかりだが、何と言っても清志郎の歌唱が本当に素晴らしい。
永遠の名曲『ヒッピーに捧ぐ』『スローバラード』を筆頭に、ソウルフルに響く絶唱がダイレクトに感覚を刺激してくる。アルバム通して言えることだが、そこかしこに涙腺と琴線に触れる感動が潜んでいるからたまらない。
ソウルシンガー・忌野清志郎の歌声に涙する、まごうことなき大名盤。
PYG 『PYG!』
元ザ・タイガースの沢田研二と岸部修三、元ザ・テンプターズの萩原健一と大口ヒロシ、元ザ・スパイダーズの井上堯之という、GSを代表する錚々たる顔ぶれが集ったスーパー・グループ唯一のスタジオ盤。
1stシングル『花・太陽・雨』では、サイケな不協和音の後に哀愁ただようアコースティックナンバーが始まるが、抑揚のない展開とシンプルなサウンドが、逆に歌やコーラスワークを際立たせているように感じる。
ロックテイストあるサウンド全体を支えたのは井上堯之(G)の功績が大きそうだが、たとえば『やすらぎを求めて』や『祈る』で聴ける沢田研二の歌唱には、人を惹きつける何か特別なものが宿っている気がしてならない。
日本語ロックの黎明期にひっそりと咲いた、味わい深い名盤。
サディスティック・ミカ・バンド 『黒船』
プラスティック・オノ・バンドをもじったバンドの2作目。当時に英米でも発売されていることからも、このバンドの評価の高さを窺い知ることができる。
アルバムのハイライトはシングル『タイムマシンにお願い』かも知れないが、歌ものとインストがいい塩梅に配され、とても素晴らしい音楽に出会うことができる。タイトルにもなっている組曲『黒船』(3曲で構成)もそのうちの一つで、なかでも『黒船(嘉永6年6月4日)』は心の琴線に触れてくる秀逸なインストナンバーだ。
これだけの作品を作れたのも解散後のメンバーの活躍を見れば納得で、この時代の作品の中ではクオリティの高さでも一歩抜きん出ていると思う。
名盤と言えば必ず名が挙がるにはワケがある。日本語ロックを聴くなら避けてはいけない必聴の一枚。
BOWWOW 『GUARANTEE』
全曲が日本語歌詞の歌謡ロック路線という、バンド史上でも異質な4枚目のアルバム。エレキサウンドに違いはないが、曲調やボーカルの歌唱・声質のせいもあり、全体的にフォークロックを聴いているかのような錯覚に見舞われるから不思議なものだ。
そして特筆すべきは『ここから』。胸に沁み入るスローナンバーだが、この曲での山本恭司のギタープレイはちょっと神懸っている。特に後半のメロディアスに泣きまくるギターソロは永遠に聴いていたくなるほど素晴らしい。
のちにゴリゴリのハードロックを奏でるVOWWOWもカッコいいが、日本語を大切にした「歌もの」を聴かせてくれるこの作品もまたいいものだ。
きっとほとんどの人が知らない、ハードロック・バンドの隠れた名盤。
テツ・ヤマウチ 『ききょう』
イギリスのロックバンド、フリーやフェイセズにベーシストとして参加していた山内テツのソロ2作目。そのキャリアから、もっとロックロックしたサウンドを想像しがちだが、レパートリーの肌触りはこの上なく日本的で、とても心地のいいものになっている。
アルバム全体を温かな空気が包んでいる感じで、どれか一つが突出しているような作品ではないが、この人のロック感からはナチュラルな印象を受ける。
あえてハイライトを記すなら『ひとり旅』か。ザ・バンドにも通じるサウンドメイクが最高で、センスの良さがキラリと光るナンバーだ。
知る人ぞ知るではもったいない。多くの音楽ファンに届いてほしい、情緒あふれる名盤。
四人囃子 『ゴールデン・ピクニックス』
プログレッシブ、サイケデリック・ロックの影響が色濃くもオリジナリティあるサウンド。 “日本のピンク・フロイド” などと呼ばれたこともあったらしいが、少なくともこの作品でフロイドっぽさを感じるのは『フライング』くらい。
プログレッシブでありフュージョンでもある独創的なサウンドは極限まで洗練されていて、この音世界を作り出すメンバーの演奏レベルは極めて高い。
メロディアスで極上なインストナンバー『レディ・ヴァイオレッタ』収録。
聴き込むほどに感動的な、ジャパニーズ・プログレッシブ・ロックの金字塔。
ティン・パン・アレー 『キャラメル・ママ』
細野晴臣、鈴木茂、松任谷正隆、林立夫からなる錚々たるメンツの音楽集団。それぞれの活躍を知っているからこそ言えるセリフだが、この人たちが集まって質の悪い音楽を作るはずもなく、ロックと言うよりは上質なシティ・ポップを堪能できる一枚。
それにしても、これが45年も前の作品だとは恐れ入る。オープニングの軽快なピアノ曲から『チョッパーズ・ブギ』(後藤次利氏の超絶チョッパーカッコ良すぎ!)へ展開した時点で、完全に持っていかれてる。ハートが。
才能あふれる若きクリエイター集団が、心の底から音楽を楽しんでいる雰囲気が感じ取れ、聴いていてとても気持ちがいい作品だ。
この時代のエポックメイキングなアルバムとも言える、高密度なポップ集。
フライド・エッグ 『ドクター・シーゲルのフライド・エッグ・マシーン』
メンバーは成毛滋(G.Key.Vo)、高中正義(B.Vo)、角田ヒロ(Dr.Vo)。高中正義がベースだったというのも意外だが、参加した当時は若干17歳だったということにも驚いた。
たとえば、ブリティッシュ・ロックからの影響が色濃く現れた『ローリング・ダウン・ザ・ブロードウェイ』のバンドアンサンブルに興奮し、はたまた『アイ・ラブ・ユー』や『サムデイ』のような至高のバラードに酔いしれる。
その演奏レベルの高さや全曲英語詞ということもあり、知らずに聴けば日本のバンドだと果たして気づけるのだろうか…。完全に洋楽ロックの域に達しており、どの曲を聴いても聴き応えがあるものばかりだ。
初めて聴いたときの衝撃と感動は忘れない。いつまでも輝き続けるジャパニーズ・ロックの大名盤。
憂歌団 『憂歌団』
日本語ブルースの代名詞的存在、憂歌団のデビュー作。これが20歳そこそこの青年たちが奏でている音楽なのか…。演奏も歌声も完全に円熟味あるベテランの域だと感じるし、いろいろ凄いな、本当に。
今作に収録された『おそうじオバチャン』が大ヒット。しかし差別的な歌だという批判もあり、発売1週間で放送禁止処分を受けている。ノリと渋みのあるブルースにコミカルな歌詞がノッていて最高なんだが…。
言葉のわからないブルースを聴くよりも、日本語ブルースの方がずっと心に響くことを教えてくれた憂歌団。
卓越した技術とユーモアあふれる歌が心に響く。これぞ和製ブルースの最高傑作。
鈴木茂 『BAND WAGON』
はっぴいえんど解散後、単身アメリカに渡って作り上げた1stソロアルバム。現地ミュージシャンを起用してロサンゼルスで録音している。
ギタリストとして、そして音楽家として、いかに鈴木茂の才能が秀でているのかを思い知らされる名盤中の名盤。スタイリッシュでグルーヴィーな楽曲の数々には、素晴らしいという言葉しか出てこない。
大瀧詠一はこの『BAND WAGON』を名盤と呼び、細野晴臣をして「鈴木茂は天才だ」と言わしめる。
70年代、日本、ロック。『BAND WAGON』は必聴と言えるマスターピースだ。
フラワー・トラベリン・バンド 『SATORI』
内田裕也プロデュースの2作目。バンドの代表作でアメリカとカナダでもリリースしている。当時の日本にここまでサイケデリックな音を鳴らすバンドがいたとは驚きだ。
音楽的な特徴で言えば、東洋的な旋律を用いたギターや3オクターブもの音階で歌い上げるジョー山中氏の圧倒的なボーカルがある。これらが絡み合い、まるで異世界へ迷い込むかのようなトリップ感におそわれる。
高い演奏力で表現するオリエンタリズムが独特な世界を構築していて、聴くものの脳に揺さぶりをかけてくる。個性が強すぎるので、この音世界の住人になれるかどうかは聴いて判断してもらうしかない。
海外での評価も高く、日本のロック黎明期の中でも屈指の名作。
シュガー・ベイブ 『SONGS』
山下達郎が中心になってスタートしたバンドの唯一のアルバム。大瀧詠一が主宰するナイアガラ・レーベルの第一弾としてリリースされた。
今となっては信じ難いが発売した当時はさほど人気もなく、時代があとからシュガーベイブの音楽に追いついた感じになるのだろう。現代では名盤としてすっかり認知されている。
アルバムの完成度は極めて高く、山下達郎と大貫妙子がそれぞれボーカルをとるスタイルやデュオで聴かせる『すてきなメロディー』など、飽きる間もなくあっという間に聴き終えてしまう。何より耳を惹くエヴァーグリーンな楽曲ばかりだから、飽きるはずもないのだが。
素敵な歌声と音楽を。ジャパニーズ・シティ・ポップの原点がここにある。
コンディション・グリーン 『Life of change』
沖縄のハードロックバンドのデビュー作。ステージ上での過激なパフォーマンスでベトナム戦争に赴く米兵たちをも驚かせていたらしい。
そんな逸話を聞くと、パフォーマンスありきのロクでもない音楽を想像しそうになるが、英語詞で歌う楽曲自体は正当派のハードロックであり、演奏技術も高くカッコイイ曲だらけ。
勢いのあるナンバーが並ぶ中でのタイトル曲『Life of change』のメロウでソウルフルな展開や、哀愁たっぷりな泣きのギターが素晴らしいインスト曲『AKIYUMA』はこの作品の聴きどころの一つと言えるだろう。
そして、ラストを飾る『NATURE’S CALLING』で涙する。ハードロック好きなら激必聴盤。
カルメン・マキ&OZ 『カルメン・マキ&OZ』
日本における70年代のロックを知る上で、カルメン・マキの存在は僕の中で非常に大きい。この作品は以前にも別記事で紹介したことがあるので、気になる方はぜひこちらをチェックしてみてください。
井上陽水 『氷の世界』
3枚目のオリジナル・アルバム。日本で史上初の100万枚を売り上げた金字塔的な作品でもある。当時の日本人アーティストには珍しく、レコーディングはロンドンで行われている。
タイトル曲『氷の世界』のように激しく迫ってくる楽曲もあれば、陽水らしいフォークソングまでが立ち並び、総じて名曲揃い。なかでも『帰れない二人』や、4thシングル『心もよう』の素晴らしさは私的に群を抜いている。
『夢の中へ』や『少年時代』くらいしか知らない人にこそ聴いてみてほしい名作だ。
『氷の世界』は井上陽水にしか作れない世界。オリジナリティあふれる絶対的名盤がこれだ。
クリエイション 『ピュア・エレクトリック・ソウル』
竹田和夫(G.Vo)を中心に結成したブルースロック・バンド「ブルース・クリエイション」を再興し、「クリエイション」に名を改めて結成したバンドの3作目。
今の時代では考えられないジャケ写のアルバムだが、肝心の音の方はいつの時代に聴いても変わらぬカッコ良さがある。太く深みのある歌声にはソウルフルな一面もあり、じっくりと聞き込みたくなるロック・アルバムだ。
ブルージーなハード・ロックからソウルフルなバラードまでを凝縮した隠れ名盤。
センチメンタル・シティ・ロマンス 『センチメンタル・シティ・ロマンス』
名古屋を拠点に活動しているバンドの1stアルバム。細野晴臣がプロデュースしているため“はっぴいえんど”と比較しがちだが、聴きやすさで言えばこちらの方が上かも知れない。
全編に流れる穏やかで心温まるメロディ、そして言葉選びを大切にした日本語詞にも好感が持てる。派手さはなく全体的に地味な印象は残るが、胸の奥にジワリジワリと浸透する曲が多いため、むしろ長く付き合えるアルバムだ。
滑らかなメロディとバンド・アンサンブルが耳を惹く『うん、と僕は』や、たった31秒という短い時間で感動できる『マイ・ウディ・カントリー』をはじめ、きっと誰もが気に入る曲に出会えるはず。
1stにして最高傑作。緻密にアレンジされたアンサンブルが胸に響く、アメリカン・ロック・テイストの超名盤。
Char 『Char』
“天才ギタリスト” Charのソロ・デビュー作。当時まだ21歳。ただただ凄い。
ギタープレイの凄さは今さら言うまでもないが、ボーカリストとしての天性の才能やソングライティングのセンスも特筆に値するミュージシャンだ。
代表曲『スモーキー』、現在でもステージでよく演奏する『シャイニン・ユー・シャイニン・デイ』、泣きのギターに酔いしれるバラード『アイヴ・トライド』。一般的にギタリストとしての評価に注目されがちだが、音楽家として本当にファンタスティックな人だと思う。
21歳の感性と表現力に脱帽。ロック・ファン以外にもおすすめしたい歴史的名盤がこれ。
金子マリ&バックスバニー 『MARI & Bux Bunny』
CharやRCサクセションをはじめとした多くのバンドへ参加し、“下北のジャニス・ジョプリン”という異名を持つほど圧倒的な歌声を持つシンガー、金子マリ。
そんな彼女を中心に結成したバックスバニーの1stアルバム。ソウルフルな歌唱を披露する金子マリの実力は相当なものだが、ファンキーなリズム・セクションやギター、キーボードの高い演奏力は文句なしにカッコ良く、このバックミュージシャンの功績も絶対に見逃せないバンドだ。
メロウな歌唱に胸を焦がす『晴れのち曇り』、徹底してファンキーなアレンジが体を躍らせる『最後の本音』、ラストを飾る『遠い日々へ』のアダルトでムーディーな趣は、いつまでもその余韻に浸っていたくなる。
圧倒的なシンガーの歌声と、抜群なテクニックで迫るファンキー・サウンドが最高な一枚。
はっぴいえんど 『はっぴいえんど』
細野晴臣、大瀧詠一、松本隆、鈴木茂らによって結成されたバンドのデビュー作。一般的には2作目『風街ろまん』が名盤として知られているが、私的にはこちらの方が好きでよく聴いてきた。
バッファロー・スプリングフィールドやモビー・グレープなどからの影響を公言しているように、いわゆるフォークロックでは収まらず、サイケデリックなアレンジも秀逸な名作。
オープニング『春よ来い』の演奏を聴いた時点でこのバンドが只者ではないことがよく分かる。言ってしまえばすべての曲が好きだが『敵タナトスを想起せよ!』『12月の雨の日』『はっぴいえんど』あたりのロック感には、このバンドのオリジナリティがよく現れていて素晴らしい。
はっぴいえんどの音楽が時代を超えて愛される理由がよくわかる、70年代を象徴するデビュー作。
まとめ
●RCサクセション 『シングル・マン』
●PYG 『PYG!』
●サディスティック・ミカ・バンド 『黒船』
●BOWWOW 『GUARANTEE』
●テツ・ヤマウチ 『ききょう』
●四人囃子 『ゴールデン・ピクニックス』
●ティン・パン・アレー 『キャラメル・ママ』
●フライド・エッグ 『ドクター・シーゲルのフライド・エッグ・マシーン』
●憂歌団 『憂歌団』
●鈴木茂 『BAND WAGON』
●フラワー・トラベリン・バンド 『SATORI』
●シュガー・ベイブ 『SONGS』
●コンディション・グリーン 『Life of change』
●カルメン・マキ&OZ 『カルメン・マキ&OZ』
●井上陽水 『氷の世界』
●クリエイション 『ピュア・エレクトリック・ソウル』
●センチメンタル・シティ・ロマンス 『センチメンタル・シティ・ロマンス』
●Char 『Char』
●金子マリ&バックスバニー 『MARI & Bux Bunny』
●はっぴいえんど 『はっぴいえんど』
以上、70年代の日本のロックから選んだ「これだけは押さえておきたい名盤20選」でした。
https://triggerbrook.com/hogaku-100songs/