心霊体験というべきか否か
これまでの人生で3度ほど体験したことがある不思議な出来事。
今でも忘れられない真夜中のこと。
最後の体験から20年以上が経った今、
ぜひ、あなたにも聞いてみてほしい…。
【第1話】知らぬ女の声
![](https://triggerbrook.com/wp-content/uploads/2019/09/horror_1-640x360.jpg)
あれは僕がまだ10歳だった頃のこと。
当時は2つ上の姉と同じ部屋で、寝るときは2段ベッドの上と下。
姉が下で僕が上だった。
その夜の僕は寝付きが悪く、眠っているのかいないのか、
よくわからないまま時間だけが過ぎていく。
何時なのかは分からない。
だけど、僕と姉が寝ている部屋のドアをノックする音が聞こえた。
トントン…。 トントントン…。
「??」
ビビった。
子供ながらにその状況を考える。
だって普通に考えてみてどうだろう。
小学生の子供の部屋を、しかも真夜中に、親がノックをするわけがない。
「何なの?」「誰??」
恐怖に怯えながら、様子を伺う。
少ししてまたノックの音が聞こえてきた。
トントン…。 トントントン…。
「だ…れか…、い…ますか……」
女の声。ゆっくりとした口調。
母親とは違う、聞いたことなどない知らぬ女の声。
どう考えてもおかしい。
だいたい真夜中にそんなことをする母親なんているわけがない。
いたら嫌な親だ。
そう考えたら恐怖のあまり声も出ない。
姉はたぶん、普通に寝ている。
僕の恐怖なんて知ることもなく、きっと夢を見ている。
もう、どうすればいいのか分からない。
ただただ怖くて、怯えて、布団を頭までかぶって震えてた。
ごめんなさい…、ごめんなさい…
わけも分からず頭の中で謝りつづけ、気がつけばもう朝だった。
布団は頭までスッポリかぶってた。
あれはいったい何だったのか。
今でも忘れることができない。
【第2話】カ ナ シ バ リ
![](https://triggerbrook.com/wp-content/uploads/2019/09/horror_3-640x360.jpg)
僕は23~24歳の頃、金縛りにあうことがよくあった。
当時はポストプロダクション(映像編集の会社)に勤めていて、仕事がら夜遅くまで働くことが多く、徹夜で仕事をこなすこともあった。
本当に忙しくなると会社で寝泊まりし、3日くらい家に帰れない。
でも、やりたい仕事をやっている充実感があったから、そこに不満はなかった。
カラダは疲れてた。
若いからといって乗り切れるもんでもない。
そんなとき、頻繁に金縛りにあうようになった。
でも、金縛りの原因でよく聞く話があったから、恐怖は感じてなかった。
レム睡眠中。カラダは休息しているのに、脳は反覚醒状態。
不規則な生活が続き、疲れもストレスも溜まっていたので、
「あっ!またか。」くらいなもん。
ホントこんな感じ。
初めこそ恐怖心はあったけど、慣れれば全然大丈夫。
そんな日が続いていたある日、また金縛りにあった。
またかよ…。
でも、いつもと様子が違うことに違和感を覚えた。
妙な息苦しさもあったから、少し怖い。
早く動いてくれ、カラダ。
しばらくすると、その違和感は現実のものになってあらわれた。
肩まで掛けていた布団の首元あたりが、
右から左へゆっくりヘコんでいく。
ペコ。 ペコ。 ペコ。
何かがゆっくり歩いていく感じ。
恐い。
声は出ない。
しめつけられるような息苦しさ。
声を出したら危ないという直感もあった。
絶対に目を開けたくない。
ペコ。 ペコ。 ペコ。
結局、この横切っていくような感覚は一度だけ。
戻ってくることはなかった。
どれくらいの時間が経ったのか。
やがてカラダは動くようになり、恐る恐る目を開けた。
いつもと変わらない自分の部屋の中。
時計の針の音だけが聞こえてた。
あれは一体なんだったんだろう。
【第3話】嘘の罪
![](https://triggerbrook.com/wp-content/uploads/2019/09/horror_2-640x360.jpg)
これもまだ、ポストプロダクションに勤めていた頃の話。
その日の夜は同期メンバーでの飲み会があった。
同期は22名。ほとんどの人が出席できたこともあり、とても楽しい夜を過ごしてた。
仕事の悩み、愚痴、他愛もないくだらない話。
同期だけの集まりだから気も使わず楽しめる、開放的な時間。
スタートが遅かったこともあり、一次会が終わる頃にはもう23時をまわってた。
早い人だと終電に乗り込まないと帰れなくなる時間だ。
誰もが気持ちよく酔っぱらっている。当然のように2次会の話になる。
結果、およそ半分の10名程で2次会へ。今日は朝までコースだ。
2次会のお店までは考えてなかったので、歩きながら探してた。
しばらくすると、オープンテラスのお洒落なお店を発見。
暖かい季節だったから、外でも問題はない。
10名くらいは座れる席があったので、そのお店で飲み直すことになった。
「カンパーイ!」
本日2度目の乾杯だ。しばらく雑談が続く。
僕は通りが見える側の席に座っていて、通りの向こう側の上の方が墓地になっていることに気が付いた。
「へ~、こんなところにお墓なんてあったんだ」
たいして気にもせず飲んでたが、ふと、あるジョーダンを思いついた。
自分の対面には男が3人。こいつらをビビらせてやる。
始めた。
「ちょっとちょっと! ちょっとシッ! ちょっと静かにして!」
会話が弾んでいる中、声をかける。
「何?どした?」
視線が僕に集まる。
「あのさ、向こうにお墓があるねって話をさっきしてたじゃん?」
「なんかさ、上におばあちゃんみたいな人がいるんだけどさ、おかしくない?」
「えーーー!? 何それ、嘘だろ? おかしいじゃん?だってもう2時過ぎてるよ」
一人が振り返ろうとした。
「あーー!ダメダメ!見ちゃダメだって! あのおばあちゃんさ、ちょっと怪しいよ。さっきからずっとこっち見てるし、なんか怖いわ。見ない方がいいよ」
振り返らないように制止する。
もうちょっとビビらせてやろうと思った。
「なんでだよ!嘘言ってんじゃねえよ」
一人がまた振り返ろうする。
「やめとけって!こんな時間にやっぱりおかしいよ。ちょっと笑ってるよ。ヤバいよ!マジで。」
「うるせーな!見せろよ!」
もう言うことなんて聞かない。
一人が振り返った。
と同時に僕は言った。
「馬鹿!ババアが見てるからやめろって!!」
ゴトっ
「へ?」
テーブルの上に僕がつけていた腕時計が落ちた。
そして、その時計を見て僕は血の気が引いた。
つけていた時計はダイバーズウォッチでベルトは分厚く、自然に切れるようなものではないはず。なのに、刃物で切ったかのようにベルトがスパッと切れてた。
(なんだよ…、これ。)
酔いは一気に冷め、本当の意味でのヤバさを感じた。同期たちも驚いている。
これは怒られてる。これはバチだ。
俺は今、とんでもないことをやらかしたんだ。
僕が話してたおばあちゃんなんて、もちろん全て嘘。
見えてるわけがない。
酔っぱらって、ただただみんなをビビらせようとして言った嘘。
それなのに「ババアが見てるからやめろ!!」といった瞬間に時計が落ちた。
自分の身に何が起こったのか。
もしかしたらすべては偶然が重なっただけなのかも知れない。
時計のベルトはもともと切れる寸前で、冗談で声を上げた瞬間にたまたま落ちただけ。
でも、そんなことってあるんだろうか? 時計のベルトが瞬時に切れることなんて。
これは本当に深く反省した。
悪ふざけでもやって良いことと悪いことがある。
少なくともお墓のような場所をネタに、冗談なんか言うべきじゃない。
結局、ビビらせようとふざけていた僕自身が、一番ビビった。
今でも真相はわからない。
ただ、時計のベルトが切れたことだけは事実だ。
同じような悪ふざけは2度としない。
あとがき
すべて実話であり、最後のできごと以降、怖い体験はしていない。
別に霊感が強いわけでも、この目で何かを見たわけでもないが、説明できないこの不可思議な体験をどう考えればいいのか。
願わくば、2度と体験したくないものである。